【ブレストセンター(乳腺外科)初期臨床研修および後期臨床研修プログラムの概要】
本邦の乳癌罹患率は増加の一途をたどり、乳癌に対する医学的知識や社会的関心は急速に高まっている。
乳癌は外科学の一部として捉えられてきたが、当院では時代の変化に対応し、
より充実した乳癌診療の実践を目標にブレストセンターを設立した。
現代の乳癌診療には手術のみならず、日々進歩する抗がん剤治療や分子標的治療、
ホルモン療法ならびに放射線治療などの幅広い知識が要求される。
当院は年間320症例の乳癌手術件数を有し、県内においても乳癌診療の中核病院として位置づけられている。整容性に優れかつ低侵襲の手術を心掛けている。2013年7月よりシリコンインプラントによる乳房再建術が保険収載されたことをきっかけに、本邦でも乳房再建術の需要が急速に高まっている。当科では形成外科と共同してシリコンインプラントおよび自家組織による整容性の高い乳房再建術に取り組んでいる(2016年乳房再建手術件数 65例)。
乳癌はサブタイプなどの病理学的特徴のみならず患者個々の年齢、ライフスタイルなどによって治療方針が異なる。当センターでは豊富な症例数を背景に的確な診断と世界標準の治療を踏まえた上で、患者ひとりひとりに最もふさわしい個別化治療を心掛けている。
がん診療の中でも特に乳癌薬物療法の進歩は著しいため、最新の知見を取り入れ、臨床研究や学会発表および市民公開講座などの学術的活動を積極的に行っている。
【乳腺外科初期臨床研修プログラム】
初期臨床研修医が将来乳腺外科の道に進むかどうかに関わらず、当センターでの研修を通じて皮膚切開、縫合などの基本的な手術手技の習得のみならず薬物療法の考え方や外来診療、画像診断などの基礎知識の習得を目標としている。
1.一般目標(GIO: General Instructional Objectives)
乳がんをはじめとした乳腺疾患の病態を理解し、最新の診断、治療を習得すると共にがん患者の心のケアや患者と向き合う医師の基本的姿勢を修得し、他職種とも協力してチーム医療を実践する。
2.具体的目標(SBOs: Specific Behavioral Objectives)
1)経験すべき診察法・検査・手技
1.胸部の診察(乳房および腋窩リンパ節を含む)ができ、所見を正しく記載できる。
2.細胞診・病理組織検査の適応が判断でき、結果が解釈できる。
3.超音波検査・マンモグラフィ・CT・MRIなどの画像検査の適応が判断でき、結果が解釈できる。
4.注射法、穿刺法(胸腔・腹腔)を実施できる。
5.皮膚切開・乳房切除・皮膚縫合を実施できる。
2) 経験すべき症状・病態・疾患
1.乳癌の病態、生物学的特徴、治療方針を説明できる。
2.良性乳腺腫瘍の病態、生物学的特徴、治療方針を説明できる。
3.基本的な乳癌手術の術式について説明できる。
4.乳癌手術に伴う合併症を説明できる。
5.外科治療の適応および副作用を説明できる。
6.化学療法の適応および副作用を説明できる。
7.ホルモン療法の適応および副作用を説明できる。
8.放射線治療の適応および副作用
9.再発治療を説明できる。
10.緩和医療に参加できる。
11.地域連携に関して説明できる。
3) 全科共通項目
1.診療録(退院サマリーを含む)をPOSに従って記載し管理できる。
2.処方箋、指示箋を作成し管理できる。
3.診断書、死体検案書、紹介状、その他の証明書を作成し管理できる。
4.保健・医療・福祉の各側面に配慮しつつ診療計画を作成できる。
3.指導体制・方略(LS: Learning Strategies)
研修はおもに病棟において行う。診療部長または指導医、後期研修医とともに毎日回診し、
患者の経過、全身状態をカルテに記載する。
入院患者の手術および術前術後管理、処置、薬物療法などの実際を体験し理解する。
本プログラム研修期間にかかわらず、学会発表や論文作成の指導を受けることが可能である。
研修スケジュール
【乳腺外科後期臨床研修プログラム:乳腺専門医コース】
本邦では乳癌患者の増加と乳癌治療の専門性が著しく高まっているにもかかわらず、乳腺専門医が不足しているのが現状である。一方、乳腺外科を志す女性医師も増加傾向にある。女性外科医にとっては仕事のキャリアアップと妊娠・出産・子育てなどの女性としてのライフイベントが重なる貴重な時期である。当科では個々のキャリアプランやライフイベントに応じたフレキシブルな研修が可能である。
1.一般目標(GIO: General Instructional Objectives)
乳腺疾患の病態、検査、診断を理解し、治療方針が立てられる。
日本乳癌学会認定医・専門医およびマンモグラフィ読影認定医を取得する。
2.具体的目標(SBOs: Specific Behavioral Objectives)
1年目のカリキュラム
専門医と連携し病棟患者を受け持ち、術前評価・カンファレンス・手術・術後管理を施行する
専門医と連携し外来診療に当たり、乳癌および良性乳腺疾患に関し診療能力を養う
マンモグラフィの読影を行い、読影講習会修了者と2重読影を施行する。超音波検査について、
医師・技師とともにあたる。乳腺疾患に関し抄読会を行う
学術集会・研究会等に参加・症例報告など行う
2年目のカリキュラム
線維腺腫などの良性疾患および乳癌等について、専門医の指導のもと術者として手術を行う
細胞診や組織診、乳管造影などの外来検査についても術者として施行する
術後補助療法について理解し、その適応・内容について専門医とともに決定できる
マンモグラフィに関し、実際の撮影法などを放射線技師とともに学ぶ。超音波に関しては担当医の指導の元、検査を行う。
放射線照射に関して、放射線医師とともにその理論と実際を学ぶ
3年目のカリキュラム
摘出された標本につき、病理医とともに検討し、画像診断との対比ができるようにする
専門医の指導の元、難易度の高い乳癌症例についても術者として手術を行う
化学療法・内分泌療法などについて、その適応を専門医の協力の下判断し、施行する
専門医との連携の元、外来診療を行う。
検査の計画から治療方針の立案、手術適応について検討し、カンファレンスに提出する。
学会・地方会などに症例報告や臨床研究の結果を発表する
4年目のカリキュラム
主治医として診療に当たり、患者に病状や手術についてインフォームドコンセントを得る
主治医として後輩の指導にあたり、認定医の育成をおこなう
リハビリテーションについて、理学療法士とともに実際の指導を学ぶ。
緩和・終末期医療について理解し、ケア科医師とともに管理に当たる。
剖検例についても、病理医とともに施行し、病態について知識を深める。看護師・薬剤師などとチーム医療を行う
5年目のカリキュラム
患者の家族構成や職業年齢などを考慮した対応ができるようになる
カウンセリング等についても、心療内科や保健医療部に相談できるようにする
各種の臨床試験について、その倫理と理論、方法などについて学ぶ
医療と病院管理および行政についてそれぞれの役割、バランスなどについて理解する
3.取得できる資格
日本乳癌学会認定医・専門医(日本外科学会専門医の取得が必須であるため、乳癌以外の日本外科学会認定医・専門医手術必修 項目に関しては当院外科もしくはさいたま市立病院外科で修練可能である)、マンモグラフィ読影認定医、がん治療認定医、乳房再建実施医
指導責任者 櫻井 孝志(外科部長、ブレストセンター長)
研修担当医 関 大仁(乳腺外科医長)
研修内容および見学に関するご相談窓口
埼玉メディカルセンター総務企画課
TEL 048-832-4951 FAX048-838-7527
E-mail main@saitama.jcho.go.jp
乳癌は外科学の一部として捉えられてきたが、当院では時代の変化に対応し、
より充実した乳癌診療の実践を目標にブレストセンターを設立した。
現代の乳癌診療には手術のみならず、日々進歩する抗がん剤治療や分子標的治療、
ホルモン療法ならびに放射線治療などの幅広い知識が要求される。
当院は年間320症例の乳癌手術件数を有し、県内においても乳癌診療の中核病院として位置づけられている。整容性に優れかつ低侵襲の手術を心掛けている。2013年7月よりシリコンインプラントによる乳房再建術が保険収載されたことをきっかけに、本邦でも乳房再建術の需要が急速に高まっている。当科では形成外科と共同してシリコンインプラントおよび自家組織による整容性の高い乳房再建術に取り組んでいる(2016年乳房再建手術件数 65例)。
乳癌はサブタイプなどの病理学的特徴のみならず患者個々の年齢、ライフスタイルなどによって治療方針が異なる。当センターでは豊富な症例数を背景に的確な診断と世界標準の治療を踏まえた上で、患者ひとりひとりに最もふさわしい個別化治療を心掛けている。
がん診療の中でも特に乳癌薬物療法の進歩は著しいため、最新の知見を取り入れ、臨床研究や学会発表および市民公開講座などの学術的活動を積極的に行っている。
【乳腺外科初期臨床研修プログラム】
初期臨床研修医が将来乳腺外科の道に進むかどうかに関わらず、当センターでの研修を通じて皮膚切開、縫合などの基本的な手術手技の習得のみならず薬物療法の考え方や外来診療、画像診断などの基礎知識の習得を目標としている。
1.一般目標(GIO: General Instructional Objectives)
乳がんをはじめとした乳腺疾患の病態を理解し、最新の診断、治療を習得すると共にがん患者の心のケアや患者と向き合う医師の基本的姿勢を修得し、他職種とも協力してチーム医療を実践する。
2.具体的目標(SBOs: Specific Behavioral Objectives)
1)経験すべき診察法・検査・手技
1.胸部の診察(乳房および腋窩リンパ節を含む)ができ、所見を正しく記載できる。
2.細胞診・病理組織検査の適応が判断でき、結果が解釈できる。
3.超音波検査・マンモグラフィ・CT・MRIなどの画像検査の適応が判断でき、結果が解釈できる。
4.注射法、穿刺法(胸腔・腹腔)を実施できる。
5.皮膚切開・乳房切除・皮膚縫合を実施できる。
2) 経験すべき症状・病態・疾患
1.乳癌の病態、生物学的特徴、治療方針を説明できる。
2.良性乳腺腫瘍の病態、生物学的特徴、治療方針を説明できる。
3.基本的な乳癌手術の術式について説明できる。
4.乳癌手術に伴う合併症を説明できる。
5.外科治療の適応および副作用を説明できる。
6.化学療法の適応および副作用を説明できる。
7.ホルモン療法の適応および副作用を説明できる。
8.放射線治療の適応および副作用
9.再発治療を説明できる。
10.緩和医療に参加できる。
11.地域連携に関して説明できる。
3) 全科共通項目
1.診療録(退院サマリーを含む)をPOSに従って記載し管理できる。
2.処方箋、指示箋を作成し管理できる。
3.診断書、死体検案書、紹介状、その他の証明書を作成し管理できる。
4.保健・医療・福祉の各側面に配慮しつつ診療計画を作成できる。
3.指導体制・方略(LS: Learning Strategies)
研修はおもに病棟において行う。診療部長または指導医、後期研修医とともに毎日回診し、
患者の経過、全身状態をカルテに記載する。
入院患者の手術および術前術後管理、処置、薬物療法などの実際を体験し理解する。
本プログラム研修期間にかかわらず、学会発表や論文作成の指導を受けることが可能である。
研修スケジュール
月 |
火 |
水 |
木 |
金 |
乳腺外来 |
手術 |
乳腺外来 |
手術 |
検査・乳腺外来 |
検査 |
手術 |
病棟 |
手術 |
外来手術・検査 |
【乳腺外科後期臨床研修プログラム:乳腺専門医コース】
本邦では乳癌患者の増加と乳癌治療の専門性が著しく高まっているにもかかわらず、乳腺専門医が不足しているのが現状である。一方、乳腺外科を志す女性医師も増加傾向にある。女性外科医にとっては仕事のキャリアアップと妊娠・出産・子育てなどの女性としてのライフイベントが重なる貴重な時期である。当科では個々のキャリアプランやライフイベントに応じたフレキシブルな研修が可能である。
1.一般目標(GIO: General Instructional Objectives)
乳腺疾患の病態、検査、診断を理解し、治療方針が立てられる。
日本乳癌学会認定医・専門医およびマンモグラフィ読影認定医を取得する。
2.具体的目標(SBOs: Specific Behavioral Objectives)
1年目のカリキュラム
専門医と連携し病棟患者を受け持ち、術前評価・カンファレンス・手術・術後管理を施行する
専門医と連携し外来診療に当たり、乳癌および良性乳腺疾患に関し診療能力を養う
マンモグラフィの読影を行い、読影講習会修了者と2重読影を施行する。超音波検査について、
医師・技師とともにあたる。乳腺疾患に関し抄読会を行う
学術集会・研究会等に参加・症例報告など行う
2年目のカリキュラム
線維腺腫などの良性疾患および乳癌等について、専門医の指導のもと術者として手術を行う
細胞診や組織診、乳管造影などの外来検査についても術者として施行する
術後補助療法について理解し、その適応・内容について専門医とともに決定できる
マンモグラフィに関し、実際の撮影法などを放射線技師とともに学ぶ。超音波に関しては担当医の指導の元、検査を行う。
放射線照射に関して、放射線医師とともにその理論と実際を学ぶ
3年目のカリキュラム
摘出された標本につき、病理医とともに検討し、画像診断との対比ができるようにする
専門医の指導の元、難易度の高い乳癌症例についても術者として手術を行う
化学療法・内分泌療法などについて、その適応を専門医の協力の下判断し、施行する
専門医との連携の元、外来診療を行う。
検査の計画から治療方針の立案、手術適応について検討し、カンファレンスに提出する。
学会・地方会などに症例報告や臨床研究の結果を発表する
4年目のカリキュラム
主治医として診療に当たり、患者に病状や手術についてインフォームドコンセントを得る
主治医として後輩の指導にあたり、認定医の育成をおこなう
リハビリテーションについて、理学療法士とともに実際の指導を学ぶ。
緩和・終末期医療について理解し、ケア科医師とともに管理に当たる。
剖検例についても、病理医とともに施行し、病態について知識を深める。看護師・薬剤師などとチーム医療を行う
5年目のカリキュラム
患者の家族構成や職業年齢などを考慮した対応ができるようになる
カウンセリング等についても、心療内科や保健医療部に相談できるようにする
各種の臨床試験について、その倫理と理論、方法などについて学ぶ
医療と病院管理および行政についてそれぞれの役割、バランスなどについて理解する
3.取得できる資格
日本乳癌学会認定医・専門医(日本外科学会専門医の取得が必須であるため、乳癌以外の日本外科学会認定医・専門医手術必修 項目に関しては当院外科もしくはさいたま市立病院外科で修練可能である)、マンモグラフィ読影認定医、がん治療認定医、乳房再建実施医
指導責任者 櫻井 孝志(外科部長、ブレストセンター長)
研修担当医 関 大仁(乳腺外科医長)
研修内容および見学に関するご相談窓口
埼玉メディカルセンター総務企画課
TEL 048-832-4951 FAX048-838-7527
E-mail main@saitama.jcho.go.jp