腎臓内科

診療・各部門

腎臓内科

紹介

当院の腎センターは1970年代に埼玉県立の腎センターとして設立され、その後、社会保険病院の時代に県から当院に移管された経緯があり、地域における腎臓内科・透析医療の中核的な施設の一つとして機能しています。透析ベッドは23床、腎臓内科の外来は腎センター外来と内科外来にて連日2診から3診の体制となっています。腎臓内科の一般外来に加え、糖尿病性腎症外来、シャント・エコー外来、IgA腎症外来、多発性嚢胞腎外来、といった専門外来での対応もしています。

2019年症例数は以下の通りです。
血液透析導入 86名
腹膜透析導入 4名
腎生検 34例
アクセス手術 114例
エコーガイド・シャント血管PTA 58例

1)検尿異常と腎生検、IgA腎症について
検尿異常を認める腎炎疑いの患者さんの場合、原則的に免疫抑制治療の適応となる可能性がある患者さんに腎生検(腎臓の一部を採取する検査)をお勧めしています。腎生検は3泊4日の入院をお願いしています。出血のリスクを減らすため、治療方針決定に必要な最小限の検体を取らせていただく方針で腎生検を行っています

血尿単独の検尿異常の場合
蛋白尿を認めない血尿単独の検尿異常の場合、腎生検でIgA腎症と診断させれても通常は免疫介入の適応ではないため、例外的な事情(妊娠をご希望の女性など)のある患者さんを除き、腎生検はおすすめしていません。

蛋白尿を認める場合
蛋白尿を認める場合、腎生検をおすすめする場合があります。慢性腎炎は長期の経過が問題となる病気であり、扁摘パルスなどの積極的な治療を受けるか否かついては、患者さんのライフスタイルや将来に対しての考かた、といった個々の患者さんの事情が重要な要素であり、患者さんと相談しならがら方針を決めています。尿蛋白が1日1gを超えるIgA腎症の場合、1gの尿蛋白が持続すると予後は極めて不良であること、免疫抑制治療により腎不全へ進行を回避できることが期待できること、免疫抑制治療にはある程度の副作用があること、から、血尿を認めるなど、IgA腎症の疑いが高い経過の患者さんには、腎生検を積極的にお勧めしています。

IgA腎症のステロイド治療について
腎生検でIgA腎症と診断され、かつ、蛋白尿の多い場合は、扁摘パルスも含めた積極的な免疫抑制治療をお勧めています。当院ではPozzi方式といわれている3日間の点滴を2ヶ月ことに3回行う方法を行っており、2泊3日の入院でのパルス治療を行っています。小さなお子様がいらしゃる方などでは、外来でのパルスも行っていますが、3日間続けて半休をとることが容易ではない方が多く、また、パルス直後は不眠などの若干の体調の不良を来す場合もあり、勤務を継続しつつの3日連続の通院は負担となる方が珍しくないようです。また、入院の場合、血糖値の細かな管理が可能であり、副作用のリスク軽減が期待できる薬剤の投与も可能です。金曜日の入院で日曜日に退院、土曜日入院で月曜日退院の日程にも対応してい ます。ステロイド・パルスをご希望になられない患者さんの場合、少量のステロイド(プレドニン15mg程度)と免疫抑制剤の併用による外来での免疫治療も試みています。治療期間は長くなってしまいますが、尿蛋白・血尿の寛解が得られる患者さんも多くいらっしゃいます。
尿蛋白の多いIgA腎症において、尿蛋白が減少すれば腎不全への進行のリスクが減ることが知られていること、免疫治療への感受性は個々の患者さんで異なることより、特定の治療スケジュールに固執せず、尿蛋白が十分減少しない場合は、追加のパルス治療、免疫抑制剤に併用投与、などをお勧めしています。扁摘とPozzi法式の決まった治療スケジュールを行っている施設からの論文報告に比べ、尿蛋白の減少する患者さんの割合は高い傾向にあると思います。

IgA腎症における扁桃腺摘出についての当院の考え方
扁摘をしなくてもステロイド治療により検尿所見の寛解が得られる場合が多いのですが、組織所見が悪い、蛋白尿が多い、などの場合は扁摘後のパルスにより寛解率が上昇するとの報告もあり、可能な方はパルスに先行する扁摘をおすすめしています。一方で、扁摘を受けることによりステロイド治療後の再発が減少することが知られており、IgA腎症における扁摘の大きな役割ではと考えています。パルスに先行して扁摘ができない方でも、パルス治療の途中やパルス治療後に扁摘を受けることが可能な方は、扁摘を受けることをお勧めしています。

2)ネフローセなどの、ご高齢の方のステロイド治療について。
現在の腎疾患のガイドラインでは、ネフローゼや血管炎など、ステロイド治療が必要となることもある疾患において、ご高齢の方においても、「成人」のひとくくりで治療方法が規定されている場合が多く、実際、ご高齢の方の膜性腎症ネフローゼにおいても高用量のステロイドの内服治療が行われることも珍しくないようですが、副作用のリスクが若年の方に比べて高いように思います。ご高齢の方を対象としたネフローゼについての前向きのRCTはなく、したがって、エビデンスはない状況を踏まえ、当院ではガイドラインに縛られず、個々の患者さんの状況とご希望にあわせた治療を心がけています。

3)透析関連医療について
末期腎不全の患者さんには透析代替療法が必要です。腎代替療法には、血液透析、腹膜透析、腹膜透析と血液透析の併用、腎移植、在宅血液透析があります。当院では血液透析、腹膜透析、腹膜透析と血液透析の併用に対応しています。腎移植は当院で移植手術は行っていませんが、非常勤の腎移植専門医による移植後の管理、腎移植希望の患者さんの事前の相談、に対応できます。在宅血液透析は当院では対応していません。
当院では基本的に維持透析は行っていませんが、透析患者さんが何らかの疾患などにより当院への入院が必要となった場合、入院中の透析は当方で行います。透析ベットは総合病院としては多く、入院が必要な透析患者さんに透析ベッドがないことを理由に入院の延期をおねがいすることは通常ありません。

外来担当医紹介

名前 職位 専門 資格
山路 安義 副院長 腎臓内科全般 日本内科学会総合内科専門医
日本腎臓学会専門医・指導医
日本透析医学会透析専門医
柏 真紀 医員 腎臓内科全般 日本内科学会認定内科医
日本腎臓学会腎臓専門医
日本透析医学会透析専門医
伊藤 智章 医員 腎臓内科全般
シャントPTA
内分泌疾患
日本内科学会認定内科医
日本内科学会総合内科専門医
日本腎臓学会腎臓専門医・指導医
日本内分泌学会内分泌代謝科専門医
日本透析医学会透析専門医
日本透析医学会VA血管内治療認定医
日本透析アクセス医学会VA血管内治療認定医
透析VAIVT医学会VAIVT認定専門医・VAIVT血管内治療医
腎代替療法専門指導士
日本医師会認定産業医
孫 燕 医員 腎臓内科全般 日本内科学会認定内科医
金子雄太朗 医員 腎臓内科全般
救急医療
松本 大      
名前 職位 専門 資格
井上 秀二 非常勤 腎臓内科全般
腹膜透析
日本内科学会認定内科・総合内科専門医
日本腎臓学会腎臓専門医
水口 斉 非常勤 腎臓内科全般
PTA
シャント造設
日本内科学会認定内科医
日本腎臓学会腎臓専門医
日本透析医学会透析専門医
日本内科学会総合内科専門医
中川 健 非常勤 腎臓内科全般
腎移植

施設認定

日本腎臓学会研修施設
日本腎臓学会認定教育施設
日本透析医学会教育関連施設
日本透析医学会専門医制度認定施設

腎臓内科に興味を持たれている先生方に、当院の 腎臓内科・腎センターの紹介をさせていただきます。

当院の腎センターは1970年代に埼玉県立の腎センターとして設立されました。その後、社会保険病院の時代に県から当院に移管された経緯があり、地域における腎臓内科・透析医療の中核的な施設の一つとして機能しています。透析ベットは23床、外来は腎センターの外来と内科外来にて連日2診から3診の体制となっています。

当院で作成しているホームページです。
Iga腎症を中心に腎疾患における蛋白尿の臨床的な意義を紹介しています。
ご笑覧いだだければ幸いです。
「蛋白尿から見たIga腎症と慢性腎臓病」

・腎病理カンファレンス
腎生検症例は病理科に多数のストックがあり自主的な学習が可能です。
2020年2月より外部講師の先生をお招きし、2ヶ月に1回、腎病理カンファレンスをはじめました。

・腎炎・ネフローゼについて。
ネフローゼも含め、年間30例程度の腎生検を行っています。腎炎疑いの患者さんの腎生検は、原則的には、免疫抑制治療の適応となる可能性がある患者さんにお勧めしています。蛋白尿を認めない血尿単独の症例のIgA腎症は、通常、免疫介入の適応ではないため、例外的な事情のある患者さんを除き、腎生検はおすすめしていません。
当院のネフローセに対する治療方針の特色として、ステロイドなどの免疫抑制治療をガイドラインの推奨をそのまま、機械的に個々の患者さんに当てはめることを回避していることがあると思います。腎炎・ネフローゼ・ANCA関連腎炎の免疫抑制療法に関するRCTによるエビデンスは極めて限定的です。RCTで検証できる期間は長くて5年、多くのRCTは2年程度です。腎炎・ネフローゼは10年以上の長期予後が問題となる疾患であり、RCTの結果を無条件で参考にできる疾患ではないことは明らかです。
ネフローゼの寛解は短期間で解決がつく問題であり、「微小変化ネフローゼ」でくくられてたRCTはは多数ありますが、年齢・性別(骨粗鬆症や筋力低下の副作用との関連で重要です)、尿蛋白や血清アルブミンの程度、AKIの合併の有無、浮腫の程度、などのサブ・グループで検討されたRCTはありません。RCTの寛解率だけを参考にすれば、高用量のステロイドをある程度長期投与すればよいことになりますが、高用量ステロイド治療の副作用による健康被害も稀ではない一方、低用量のステロイドで寛解する症例も珍しくなく、微小変化ネフローゼを一括りにして同じステロイドの投与を一律に行うことは正しい方向性ではないのでは、と考えています。個々の患者さんの病状や社会背景より、治療の必要性・副作用のリスクを考えつつ、患者さんと相談しながら治療方法を選択することを基本的な姿勢としています。

・IgA腎症について
尿蛋白の多いIgA腎症については扁摘・パスルも含めた、積極的な免疫抑制治療を推奨しています。パルスは半月体の多い症例などの例外を除き、Pozzi法を用いていますが、1)尿蛋白の多いIgA腎症において尿蛋白寛解は予後を強く規定していることは繰り返し明らかとされていること、2)免疫抑制治療に対する感受性は個々の患者さんでことなることも明らかと思われること、から、尿蛋白を治療のターゲットとして個々の患者さんでプロトコールを変更することも多く、扁摘と3回パルスで尿蛋白が寛解しない患者さんでは追加の免疫抑制治療を推奨しています。扁摘については扁摘後のパルスで若干寛解率が上昇する群があると報告されていますが、むしろ、治療後の再発の可能性を減らすという意味で重要では、と思っています。
当院でのIga腎症の考え方など、下記をご参照ください
「蛋白尿から見たIga腎症と慢性腎臓病」

・透析関連医療について
透析導入症例は 例年、血液透析が80名程度、腹膜透析が数名です。
透析医療に関係する特色としては、症例数が比較的多いことに加え、腎臓内科も内シャント手術を行っていることがあります。内シャント手術は年間100例以上行っていますが、その半数以上を腎臓内科で対応しています。又、3年ほど前からエコーガイドPTAを導入し、昨年は年間50例ほどエコーガイドにてPTAを行いました。今後も症例はさらに増加していくと想定しています。一般的な血管造影を用いたPTAと比べ、シャント血管のエコー診断とPTAは情報量も多く、患者さんの負担も少ない、優れた手法であると考えています。臨時、緊急透析において、ダブルルーメンカテールをあまり使用しないことも特色の一つかもしれません。緊急透析、ならびにアクセス不全の患者さんにおいて、10年程前より大腿〜鼠径部の静脈を直接穿刺にて透析を行う場合が多くなっています。数年前からエコーガイドでの穿刺導入し、動脈穿刺の頻度はさらに低下しています。留置カテーテルを挿入しないことで、カテーテル感染を回避できる、アクセス不全の患者さんを外来で管理ができる、などの利点がありますし、鼠径部の穿刺を多数経験できることは研修をご希望の先生にとってはよいことでは、とも思います。腹膜透析は現在外来で30名程度の患者さんを管理しています。

・病棟について
現在4階東病棟に透析室と腎臓内科の病床が隣接して配置されています。又、常勤の看護師は透析スタッフと病棟スタッフを掛け持ちしており、腎臓内科医として仕事をし易い職場環境と思います。

・保存期CKDの外来診療について
当院は分泌代謝領域においてもさいたま市おける中核的な病院の一つとして機能していることもあり、糖尿病性腎症の症例を多数、経験することができます。地域医師の先生方との病診連携を今後もすすめていきたいと考えています。

・腎臓内科に興味を持たれている若手の先生向けに作成した一文です。
ご笑覧いただければ幸いです。
「腎臓内科医が関与する領域は多彩です。腎生検の病理診断、ネフローゼや腎炎の免疫抑制治療、糖尿病性腎症の管理、AKIの治療・管理、慢性腎臓病の外来管理、末期腎不全における腎代替療法への導入、血液透析・腹膜透析患者の合併症の管理、体液・電解質異常の管理、などに加え、当院を含む一部の施設では内シャント形成、シャント血管のPTAを腎臓内科が担当する場合もあります。興味のある分野を極めることもできますし、また同時に、多彩な領域に関与する腎臓内科医はいわゆる「専門バカ」になりにくい印象です。
腎臓内科は、患者さんの背景に合わせた治療選択の幅がひろく、いわゆる「病気を見る」ではなく「患者さんをみる」医療を実践できる専門分野だと思います。その理由の一つが、腎臓内科領域の疾患は経過が長期間に渡ること、個々の患者の多様性が高いこと、などから、前向きのランダム化研究が困難なため、ガイドラインの推奨レベルCがほとんどであり、診断後にガイドラインにあわせて決まった治療をあてはめればよい、わけではないからです。一方で、近年の電子カルテの導入後、大規模・詳細なコホート研究の発表が相次いでおり、ガイドライン上は推奨レベルCのままですが、臨床の現場に還元できる多数の重要な臨床的な事実が明らかとされてきており、これまで手探りであったことの科学的な裏付けが得られる時代となってきいます。腎臓内科の臨床では、これからますます、個々の患者さんにあわせた「科学的な裏付けのあるさじ加減」が大切になっていくことと思っています。」