診療・各部門
● 部長挨拶 臨床医が治療方針を決定する上で欠かせないのが病理・細胞診検査です。組織検査は年間数10,000件、細胞診検査は約18,000件で、多くの検体を扱っております。地域の中核病院としての病院の位置づけを自覚し、スタッフ一同、より精度の高い病理・細胞診検査を目指し日々精励しております。
● 業務基本方針 ・検体の適切な取り扱い ・技術の研鑽 ・真実の追求(正確かつ迅速な診断を目指す)
● 病理診断科 概要
病理診断科のスタッフは現在、医師4名(常勤1名、嘱託3名)、臨床検査技師7名(細胞検査士7名)です。病理組織標本、細胞診標本の作製、診断をはじめとして多岐にわたる業務を行っています。また、当施設は専門学会(日本病理学会および日本臨床細胞学会)の認定施設に指定されています。技術の研鑽を積むべく各種学会や研究会などにも積極的に参加しております。以下に主要な業務を簡潔に紹介致します。
1. 病理組織診断
病理組織診断とは、患者さんから切除された組織検体について良悪性や病変進行具合などを診断するものです。病名の確定や治療方針の決定などに役立つ検査です。ホクロや胃カメラで採取されるポリープなどの小型の検体から、手術で切除摘出される胃、肺など大きな検体まで、体中のさまざまな臓器が対象となります。摘出された検体から病変部を選び出し、機械(自動包埋装置)(写真1)にかけて液の浸透後、パラフィン(蝋)に埋められた組織材料を、ミクロトーム(写真2)を使い厚さ4-5ミクロンで薄切し、ヘマトキシリン・エオジン染色(写真3)を行います。また、診断に必要な場合は特殊な染色を行うこともあります。出来上がった標本を顕微鏡をみて診断します。通常検体を受け付けてから診断するまでに3日~1週間かかります。
近年行なわれている癌の個別化治療においても遺伝子解析(乳癌のHER2や肺癌のEGFR、大腸癌のK-rasなど)に使用する標本の判定や提供で役立っています。
写真1・自動包埋装置 | 写真2・ミクロトーム | 写真3・ヘマトキシリン・エオジン染色(乳癌の組織像) |
2. 術中迅速診断
術中迅速組織診断は手術が行われている間に30分程度でリアルタイムな病理診断を行います。手術前に確定診断が得られていない場合や、手術医が癌の転移や広がりを確認したい場合に有効な検査です。この結果によって手術の方式が変わることがあります。 組織材料を瞬時に凍結させて、クリオスタット(写真4)で薄切し、標本を作製します。 術中迅速細胞診断は手術中に確認できた胸水や腹水、あるいは病変がはっきりしない場合でも腹腔や胸腔を洗って細胞を採取するか、腫瘤を捺印して細胞を採取し、標本を作製します。この判定結果も手術方式の選択や進行度判断に役立ちます。
写真4・クリオスタット |
3. 免疫組織化学的検査
多くの病変はHE染色で診断できますが、時には精密な診断が難しい病変もあります。このような場合に行われるのが免疫組織化学的検査です。病変の性質(良性か悪性か)や由来(胃がんかリンパ腫か)などを明らかにして診断に寄与する有力な検査方法です。現在当院では省略化と標準化のため自動免疫染色装置(写真5)を用いて免疫染色を行っています。
写真5・自動免疫染色装置 |
4. 細胞診断
細胞診断は組織検査と比べ侵襲性の少ない点から頻用されており、一般的には子宮頸がん検診や、肺がん検診などで行われる検査ですが、病院では検査対象は非常に多岐にわたります。大きく分けて、喀痰や、尿、腹水、胸水など自然に剥離したものと、乳腺、甲状腺、気管支擦過、膵管ブラシなど人工的に細胞を採取するものがあります。前者は細胞を採る時に痛みを伴うことはなく、後者も手術などと比較して痛みが少なく、がんの早期発見、病変の早期診断に役立っている検査法です。治療効果の判定にも使用されます。パパニコロウ染色を施し、顕微鏡(写真6)にて癌細胞(写真7)の有無や感染症の有無などを観察します。
写真6・顕微鏡 | 写真7・喀痰中にみられた癌細胞(パパニコロウ染色) |
5. 病理解剖
病気で亡くなられた患者さんに対して病変の進行度、治療の効果などを明らかにするため行われるのが病理解剖の目的です。全身検索のため最終診断には数カ月を要しますが病理解剖によって得られる情報は貴重で、将来の医学の発展に欠かせないものです。
<スタッフの有する資格> 日本病理学会専門医 日本臨床細胞学会専門医 臨床検査技師 細胞検査士 国際細胞検査士 Fellow of International Academy of Cytology 死体解剖資格
<所属学会> 日本病理学会 日本臨床細胞学会 日本臨床検査技師会 日本癌学会 日本乳癌学会 International Academy of Pathology International Academy of Cytology